「藤沢秀行名誉棋聖 生誕百年の集い」

多くの人に愛された

素晴らしい棋譜、多くの伝説を残し2009年に亡くなった藤沢秀行名誉棋聖の生誕百年を記念した集いが6月15日、日本棋院にて行われました。

門下の高尾紳路九段を始め、薫陶を受けた多くの棋士やファンが集まり、思い出話に花を咲かせました。

藤沢秀行名誉棋聖は1925年6月14日生まれ。2009年83歳で亡くなるまで、多くの人に愛され、数々の伝説を残しました。

書の大家としても知られる

「藤沢秀行名誉棋聖 生誕百年の集い」では、書の大家としても知られる秀行先生の書や写真などが展示されたり、薫陶を受けた棋士たちからファンが指導碁を打ってもらったり、棋士が次々登壇して思い出を語るなど楽しい催しがありました。

武宮正樹九段は「秀行先生との対局は、勝ち負けは頭からすっかり消えて、ただいい碁を打ちたいという気持ちになった」、石田秀芳二十四世本因坊は「棋聖戦になると人が変わったように強くなった。初めて競輪に連れて行かれたのが秀行先生」など、対局のときの気持ちなど楽しい話をしていました。

薫陶を受けた棋士たちによる指導碁も行われた

いっぽう、弟子の高尾九段や三村九段は、朝5時や6時に秀行先生から電話がかかってきて、「碁盤もってこい」「あの碁のあの手をどう思うか」「(口ごもっていると)馬鹿野郎!」など怒鳴られる恐怖を語りました。

孫弟子にあたる上野愛咲美女流名人は「秀行先生には、1度だけ小学校1年のとき道場で碁を見てもらいました。妹はベビーカーに乗っていました」。「秀行先生を近くで見たことがあるようですが覚えてなくて……」と妹の上野梨紗女流棋聖。

弟子で孫の藤沢里菜女流本因坊は「すごくやさしくしていただいた。今度打とうねと、住所や電話番号が書かれた紙をいただいたのですが、その後体調を崩されて打つことはありませんでした」など、高尾九段や三村九段とは全く違う一面を見せていたようです。

生誕百年でこんなに人が集まる棋士がどれだけいるでしょうか。

秀行先生が多くの人に愛されたことが再認識できた1日でした。

囲碁将棋ファンを増やそう!「三鷹囲碁将棋フェスタ2025」

「三鷹囲碁将棋フェスタ2025」(主催:NPO法人洪道場囲碁普及会)が昨年に引き続き、5月31日に三鷹市「三鷹産業プラザ」にて盛大に模様されました。あいにくの雨天でしたが、子どもと大人、500人近くが1日楽しみました。

河村孝三鷹市長の「初心者の方にも気軽に囲碁と将棋の世界に触れられるイベントとして楽しんでいただければと思います」との挨拶どおり、囲碁と将棋、初心者から腕に覚えのある人までが楽しめる企画が満載のフェスタです。

囲碁の初心者対象のブースだけでも、①入門体験②パンダネット③公文囲碁④純碁体験(王銘エン九段、大西研也六段)と各種あり、自分にあったものを選べます。打てる人は自由対局もできるし、穂坂繭三段や金子真季二段との記念対局(抽選)もありました。

さらに「ゲームマスター」芝野龍之介三段による囲碁・将棋・チェスなどの五面同時対局に挑戦することもできます。

将棋も初心者用の「ぴょうんぴょんしょうぎ」「どうぶつしょうぎ」から先崎学八段らに挑戦できる記念対局もあり、どんな棋力の人も楽しめるよう用意されていました。

またショートムービーの上映、吉原由香里六段や洪清泉四段、将棋の先崎学八段、高橋和女流三段によるトークショーもあり、囲碁将棋ができない人も楽しめる時間もあります。

このイベントは参加無料で、スタンプラリーを達成すると抽選でかなり豪華な賞品ももらって帰れるという素敵なおまけもついていました。

ひとりでも囲碁将棋を始めてくれる人が増えてくれたことを期待してやみません。

碁聖戦の挑戦者は芝野虎丸十段に決定 

5月はハードスケジュールだった芝野十段

井山裕太碁聖への挑戦者を決めるトーナメント決勝戦が5月29日に日本棋院東京本院で打たれ、芝野虎丸十段が挑戦者となりました。

決勝戦は芝野十段と大竹優七段との間で争われました。

初めて挑戦者決定戦に勝ち進んだ大竹優七段は長野県出身の23歳。中部総本部所属で本因坊リーグに在籍経験もある若手のホープです。

準決勝ではこれまで1度も勝ったことのない一力遼棋聖を破って決勝に臨みました。勢いがあります。

芝野虎丸十段も先月に十段位を井山裕太王座から奪って無冠を返上。今年は好調を維持していますが、4日前に本因坊戦挑戦手合五番勝負大2局で一力遼本因坊に黒星を喫し、カド番に追い込まれたばかり。

準決勝で一力遼棋聖を初めて破った大竹七段

一力棋聖に対して明暗が分かれている両者。対局は芝野十段が序盤の折衝で奪ったリードをそのまま守り、勝ちきりました。

芝野十段は5月だけで7局手合いがあり、タイトル戦は移動日もありますので、ハードスケジュールで動いています。

十段戦に続いて2回目の井山―芝野のタイトル戦となる碁聖戦は、6月25日に開幕します。

名人戦リーグ全勝対決は井山王座に軍配

序盤で抜け出し、勝ち切った

一力遼名人への挑戦権を争う名人戦リーグは、全勝の井山裕太王座と福岡航太朗七段が激突する天王山を迎えました。

井山裕太王座は今年、棋聖戦で一力遼棋聖と戦っている最中から調子を落としてきました。勝っている碁をそのまま矛を収めず、さらに追及するなど自ら勝ち星を逃がすような戦いが散見され、3勝1敗と追い込んでいたのに、棋聖返り咲きを逃しました。棋聖戦が終わると、芝野虎丸九段との十段戦防衛戦に望みましたが、それも三連敗でタイトルを奪われました。対戦成績も10勝11敗と負け越し、プロ入りしてもっとも勝ち星に恵まれない状況。そんな中でも名人リーグは勝ちを維持し、全勝を守っていました。

破竹の勢いで、初リーグを全勝で走り、目下12連勝中の福岡航太朗七段と、井山王座との全勝対決は5月15日に打たれました。

今年は本調子ではなかった井山王座

対局前の予想では福岡有利ともいわれていましたが、蓋をあけてみれば序盤で抜け出した井山王座がそのまま勝ちきり、全勝を守り、名人挑戦に大きく前進しました。

残り3戦。「やることはかわりません。ひとつひとつ全力を尽くします」と井山王座。

挑戦権の行方にも目が離せません。

第80期本因坊戦挑戦手合五番勝負が開幕 一力遼本因坊が初戦を制す

リードを守り切った(写真は名人戦)

一力遼本因坊に芝野虎丸十段が挑戦する第80期本因坊戦挑戦手合五番勝負が5月14日に開幕し、一力本因坊が幸先のよい1勝を挙げました。

本因坊戦第1局の対局場は山梨県甲府市「常磐ホテル」。同所は「決着の常磐ホテル」といわれるほど、番碁の最後のほうにセットされることが多く、第1局での開催は新鮮に思えます。

一力本因坊も常磐ホテルでは何度も対局経験がありますが、「相手はいつも井山(裕太王座)さんだったので、芝野さんというのも新鮮な気持ちです」と対局前、話していました。

今年に入っての一力本因坊の成績は10勝7敗と、勝ち越してはいるものの、一力本因坊にしては少々物足りない感じがします。

対して芝野十段は今年、18勝3敗で国内戦は1敗しかしていないほど絶好調。

第2局は秋田・能代で開催(写真は名人戦)

どんな戦いになるかと見ていましたら、序盤の分かれで一力本因坊が一本取り、そのリードを守り切って勝利をつかみました。

当日、現場で開催された大盤解説会には、癌闘病を公表している趙治勲名誉名人が元気な姿を見せたのは、ファンにとって嬉しい時間になったでしょう。

本因坊戦第2局は5月25日秋田県能代市で打たれます。