上野愛咲美女流立葵杯が女流名人を奪還 藤沢里菜女流本因坊は2冠に後退

「実力はまだまだ」(上野さん)

藤沢里菜女流名人に上野愛咲美女流立葵杯が挑戦する第36期女流名人戦が4月14、16日に打たれ、上野女流立葵杯が2連勝で前年取られた女流名人を奪還しました。

今期のシリーズは、上野さんの強さが際立ち、藤沢さんは調子が今ひとつだった印象です。

ストレートの2連勝で奪還

藤沢「2局通して全力を出し、力は発揮出来たかなと思いますが、反省点はたくさんあります。また(挑戦者決定)リーグ戦から大変ですが、挑戦者を目指して頑張りたい」

勝った上野さんは意外にも「シリーズ前はまた勝てるはずがないと思っていたのでびっくりしています。(挑戦者決定)リーグのときは調子がよかったのですが、終わってからずっと調子が悪くて。奇跡的に第1局から調子がよくなったので(勝てましたが)、実力はまだまだ。調子が悪いときでも勝負できるくらいになりたい」と、謙虚に語っていました。

「反省点はたくさんある」(藤沢さん)

これで女流タイトルは、上野さんが2つ(女流名人、女流立葵杯)、藤沢さんも2つ(女流本因坊、扇興杯女流最強)、そして上野梨紗女流棋聖という勢力図になりました。このあとに続く女性棋士は誰なのか。新しい若い力の台頭にも期待したいと思います。

本因坊戦の挑戦者は芝野虎丸九段に

今年、国内負けなしの芝野十段

一力遼本因坊への挑戦者を決めるトーナメントの決勝戦が4月7日に打たれ、芝野虎丸十段が孫喆七段を下して、挑戦者となりました。

芝野虎丸十段は今年絶好調。挑戦者を決めた対局までで15勝1敗。その1敗は海外棋戦なので、国内組にはまだ1回も負けていないのです。

挑戦を決めた3日前には、井山裕太王座から「十段」を3勝0敗のストレートで奪ったばかりでした。気分も上々だったことでしょう。

昨年、芝野十段は七大タイトルの挑戦手合いに5回も出場。しかし碁聖戦、天元戦、王座戦で挑戦者になるもすべて負け、さらに持っていた名人と十段も獲られ、久々の無冠となっていました。これは本人もだいぶこたえたようでした。

「去年、一力遼棋聖にだいぶ鍛えられた」(洪清泉四段)

芝野十段が修行していた洪道場を主宰する洪清泉四段は「去年、一力遼棋聖にだいぶ鍛えられた(名人戦と天元戦)から強くなったのでは」と、今年好調の要因を話していました。

挑戦手合いでは一力本因坊に勝ったことがありません。好調・芝野十段がどんな戦いを見せるか。

本因坊戦第1局は5月14日、山梨県甲府市の「常磐ホテル」で開幕します。

本因坊戦の挑戦者決定戦は芝野虎丸十段と孫喆七段で 上野愛咲美女流立葵杯はベスト4で敗退

「チャンスは今後も」と語った上野六段

一力遼本因坊に挑戦するのはだれか。挑戦者を決めるトーナメントの準決勝が打たれました。

まず、3月31日に打たれた芝野虎丸十段対許家元九段は芝野十段が勝って、決勝に駒を進めました。芝野十段はこのあと4月3日に井山裕太王座から十段位を奪取。今年の成績も14勝1敗(1敗は韓国の朴廷桓九段)と、国内戦負けなしと絶好調です。

そして準決勝のもう1局、孫喆七段対上野愛咲美六段戦が注目されました。

これまで挑戦者決定トーナメントで女性はベスト8が最高(藤沢里菜女流本因坊が複数回)だったところ、上野六段がベスト4に進出したので俄然盛り上がりました。あと2勝すれば挑戦者なのですから。

中盤まで上野六段がAI評価値95%の優勢だったが…

4月3日、大勢の報道陣に囲まれ、対局が開始されました。

中盤まで上野さんがAI評価値95%の優勢を築いたのですが、本人はそれほどいいとは思ってなく、状況を打開しようと仕掛けていったところ形勢を損じ逆転を許してしまいました。

女性初の挑戦者は次回におあずけとなりました。

上野「相手はだれでもみんな強いのでとくに緊張とかはなかった。苦しいながら楽しく打っていました。(女性棋士の挑戦者は?)着実に一歩ずついい感じになっている。調子がよければ、運がよければ、チャンスは今後何回かありそうな気がします」

女性の挑戦者、タイトルホルダーは遠くない未来に誕生することを期待したいですね。

芝野十段との決定戦に進んだ孫七段

本因坊戦の挑戦者決定戦、芝野虎丸十段対孫喆七段の一戦は、4月7日に打たれます。

ファン大興奮のイベント「群遊2025囲碁オールスター団体戦」 優勝は「トラトラメガネ軍団」

ステキなチーム名は公募で決まった

囲碁のトップ棋士の真剣勝負が間近で見られる「群游2025オールスター団体戦」(群游2025囲碁オールスター団体戦実行委員会、“見る・打つ・楽しむ”チームだごだご)が3月29日に名古屋市のウインクあいちで行われました。

文字通りオールスターが大集合して団体戦で戦う他にはないイベントで、トップ棋士の真剣勝負が間近で見られるため、会場にはおよそ500人の囲碁ファンが訪れていました。

5人1チームのトーナメント戦で、賞金総額は1000万円、優勝チームには500万円が贈られます。

出場メンバーを紹介しましょう。なお、チーム名は公募で決まったものです。

「世界一のキラキラ軍団」 一力遼棋聖、藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流立葵杯、牛栄子四段、上野梨紗女流棋聖

「他力本願」 山下敬吾九段、伊田篤史九段、本木克弥九段、富士田明彦七段、孫喆七段

「トラトラメガネ軍団」 芝野虎丸九段、佐田篤史七段、広瀬優一七段、大竹遊七段、酒井佑規六段

「龍翔鳳舞」 張栩九段、許家元九段、余正麒八段、謝依旻七段、呉柏毅六段

 

1回戦は抽選の結果、「トラトラ~」と「世界一~」、「他力本願」と「龍翔鳳舞」の対戦となりました。

一力棋聖を破って優勝に貢献した佐田七段

「トラトラ~」VS「世界一~」

芝野○-×上野梨紗

大竹×-○牛

佐田○-×一力

広瀬×-○藤沢

酒井○-×上野愛咲美

3勝2敗で「トラトラ~」の勝ち。とくに佐田七段が一力棋聖に勝って壇上に上がったときは、ひときわ大きな拍手が観客から送られました。

「他力本願」VS「龍翔鳳凰」

山下○-×謝

富士田×-○張

伊田×-○余

本木○-×許

孫○-×呉

山下九段は2年連続1勝もせずとも優勝していたのですが、とうとう(!)勝って「他力本願」ではなくなってしまいました。こちらも3勝2敗の接戦で「他力本願」が決勝に進みました。

決勝戦

「トラトラ~」vs「他力本願」

芝野○-×山下

大竹×-○富士田

佐田×-○伊田

広瀬○-×本木

酒井○-×孫

3勝2敗で「トラトラ~」が勝って優勝し、賞金500万円を手にしました。

芝野九段の安定した強さ、そしてワイルドカード(予選を勝ち抜いて参加)の酒井六段が2連勝と気を吐きました。

イベントも盛りだくさん

そのほか、会場には名古屋名物の「矢場とん」「妙香園」「両口屋是清」なども出店しグルメを提供したり、親子囲碁教室があったり、棋士に挑戦ができたり。対局合間には井山裕太王座らによるトークショーがあるなど、ファンを飽きさせない工夫が凝らされていました。

次回、ぜひ足を運ぶのをおすすめします!楽しいこと請け合いです。 

第72回NHK杯 余正麒八段が初優勝

初タイトルを手にした余正麒八段

第72回と長きにわたるNHK杯の決勝戦が3月23日に放映され、井山裕太王座を破って余正麒八段が優勝を果たしました。余正麒八段は全棋戦通しての嬉しい初優勝となりました。

NHK杯は日曜午後に放映され、囲碁ファンはほとんどの人が楽しみにしていることでしょう。

決勝戦の日は特別に、収録スタジオの隣に検討室がもうけられ、多くの棋士が集まって意見を交換していました。

井山裕太王座(左)の勝負手をうまくしのいだ

中盤でポイントを挙げた余正麒八段が井山裕太王座の勝負手をうまくしのいで勝ちきりました。

余正麒八段は、令和三羽ガラスと呼ばれた一力遼棋聖、芝野虎丸九段、許家元九段の3人と同世代で、本因坊挑戦者になり、リーグ在籍常連、対関西棋院連勝記録を立てるなど活躍していたのにもかかわらず、これまでひとつもタイトルを獲得したことがなかったのです。それは一力、芝野の二人を苦手としていたことが大きな原因でしょう。

今回、芝野九段を破ったことから勢いがつき、井山王座も破って嬉しい初優勝となりました。