2期連続3期目の天元となった一力遼天元就位式

芝野虎丸名人(当時)の挑戦を退け、天元位を防衛した一力遼天元の就位式が2月28日に東京都千代田区「松本楼」にて行われました。

天元戦は新聞三社連合(中日新聞<東京新聞>、北海道新聞、西日本新聞)が主催の棋戦で、タイトル戦の対局場が全国をめぐるので知られています。

最初にあいさつにたった主催新聞社代表の西日本新聞社 柴田建哉取締役会長がまず「一力さんは世界一の実力をいかんなく発揮した」とシリーズの戦いぶりを絶賛しました。

また、池坊雅史関西棋院理事長が、当日はユニクロの新聞全面広告に一力天元が採用されたことにも触れ、世界企業の顔になったことも讃えられていました。

ナショナルチーム監督の高尾紳路九段からは「若手は一力さんの背中を見て勉強している。碁の強さはもちろん、立ち振る舞い、言動などすべてとてもよいお手本になっています。世界の舞台でもさらなる活躍を」とエールを送られた。

一力天元は「半世紀の長きに渡って主催してくださりありがとうございます。きのうは手合い(棋聖戦第5局)で、負けるとお通夜の雰囲気になるかと思ったので(勝って来られて)ほっとしています。天元戦五番勝負の第1、3局はどちらに転んでもおかしくない勝負で、この2局に勝って結果を残すことができました。タイトル戦のなかで一番天元戦に出場しています。今後とも連覇を続けていきたい」と謝辞を述べ、大きな拍手を浴びていました。

若手棋士を対象とした教養講座 上野愛咲美女流・梨紗女流棋聖姉妹らがマナーとコミュニケーションを学ぶ

藤沢一就八段門下の若手棋士を対象に、「世界で活躍する人材を育成し生きる力を醸成する教養講座」のひとつとして、「マナー&コミュニケーション講座」が2月21日に新宿こども囲碁教室(東京都新宿区・藤澤一就八段主宰)にて行われました。

講師は人材育成コンサルタント・ビジネスコーチの平塚惠理子氏(オフィスノヴァエラ(株)代表取締役)。

内容はマナーとはいえ、挨拶、身だしなみ、表情、立ち振る舞い(立ち方、歩き方座り方、お辞儀の仕方、名刺交換の仕方)、上座の見分け方、適切な言葉遣いなど多岐にわたる内容で、座学だけでなく、実践も含め、11人の棋士がたっぷり3時間、ビジネスの常識やマナーを学びました。

上野愛咲美女流立葵杯は「知らないことばかりで、これからすぐに実践できることが学べてよかったです。貴重な機会をいただきました」。「名刺の渡し方が複雑で覚えるのが大変。お辞儀も今までペコペコしてしまっていましたが、1、2回でいいと学び、これから気をつけたいと思いました。元気のよい声ではきはきと挨拶するよう心がけます」と抱負を語ったのは広瀬優一七段。

愛される棋士になることも、囲碁普及には大事だと思います。

このような講座は、新人棋士皆に受講してもらうのがいいと改めて感じました。

ファッションショーとペア碁のコラボレーション

ゆうきゅう戦コシノジュンコクリスタルCUP~13路盤プロペア碁トーナメント~

上野・芝野ペアが優勝

ペア碁をご存じですか。男女ペアが一手ごと交代で囲碁のルールで打っていくゲームで、アジア大会で採用されたこともあるなど、ひとつの競技として確立しています。
1月末に藤澤一就一門後援会設立1周年を記念して「ゆうきゅう戦JUNKOKOSHINO CRYSTAL CUP」が開催されました。

ペア碁はアジア大会でも採用された

藤澤一就門下と選抜された棋士、8組16人が男女ペアになって13路盤で優勝をトーナメントで争うイベントです。
ペア碁は紳士淑女の競技ということで、ドレスアップして臨むのがマナーで、会場は大変華やかです。
決勝戦は上野梨紗女流棋聖・芝野虎丸九段ペアVS小林泉美七段・関航太郎九段。
13路盤といえども白熱した戦いが繰り広げられ、上野・芝野ペアが優勝し賞金30万円を手にしました。

さらに、今回の目玉はデザイナーで囲碁にはまってらっしゃるコシノジュンコさんが囲碁をイメージしたミニファッションショーが行われたことです。
多くの参加者が初めて目の当たりにして、感動感激しました。

囲碁を知らない人にも関心を持ってもらえる、ファッションショーとのコラボは新しい試みです。
普及の手段をいろいろ考えている人は多く、今後もこのようなイベントは増えていくことでしょう。

五代目棋士誕生 4月に関山穂香さんがプロに

関山利道九段と穂香さん父子(関山利道九段提供)

2025年4月に入段(プロ入り)する新人が次々決まってきています。

今回、日本棋院関西総本部の女流特別採用棋士に関山穂香さん(17歳)が決まりました。

これまで四代続く棋士の家系として、

木谷實九段→三女・小林(旧姓木谷)禮子七段→長女・小林泉美七段→長女・張心澄二段、次女・張心治初段

が有名でしたが、それを超える5代続く棋士一家が誕生したのです。

穂香さんは日本棋院・関西棋院を通じて初めて、5代目の棋士になります。

提供・日本棋院

穂香さん(2007年6月生まれ)の師匠、関山利道九段(関西棋院棋士 1973年6月生まれ)は父親でもあり、4代目棋士です。昨年公開された映画「碁盤斬り」の最初のタイトルが出てくるシーンで、ちょんまげを結って盤上に石を打ち付けているのが、利道九段です。

3代目は関山利夫九段(関西棋院棋士 1937年7月~1992年9月)。

2代目の関山利一九段(日本棋院から関西棋院に転籍。1909年12月~1970年1月)は、第1期本因坊で「利仙」と名乗りました。

初代の関山盛利四段は、日本棋院関西支部(関西総本部の前身)所属で、明治8(1875)年生まれ。今年はちょうど生誕150年にあたります。段位は三段であったことは確認されているのですが、関山家伝承では四段だったので、関山家を尊重して四段としています。

ぜひNHKのファミリーヒストリーなどで取り上げてはっきりしたものが知りたいですね。それには穂香さんの活躍を期待したいと思います。

最年長対局記録を更新し続ける杉内寿子八段

今年、杉内寿子八段の最高齢勝利なるか(日本棋院提供)

囲碁棋士は比較的長寿で、棋士生命も長いといわれています。

将棋界では「盤寿」という言葉があるそうです。将棋盤は9×9=81のマス目がありますので、81歳を迎えておめでたい、ということのようです。将棋棋士は81歳を迎える人が少ないということからお祝いを、という意味ときいています。

一方、囲碁棋士は81歳で現役の棋士は何人もいますので、ご存命くらい(!)ではお祝いにはなりません。

とはいえ、現役最高齢の杉内寿子(すぎうち・かずこ)八段は別格といえるでしょう。杉内八段は昭和2(1927)年3月6日生まれで、もうすぐ98歳になります。

実は夫の故・杉内雅男九段が以前の最年長対局記録を持っていました。

雅男九段は大正9(1920)年10月20日生まれ。平成29(2017)年11月21日に逝去されました。最後の対局が97歳1ヶ月(2017年11月2日)で亡くなる19日前に対局されていたのですね。寿子八段はこの記録を更新し続けているのです。

今年初戦の石倉昇九段(左)との対局で70日更新(日本棋院提供)

雅男九段の最後の勝利は2017年8月24日で、最高齢勝利、96歳10ヶ月の記録も持っています。寿子八段の最高齢勝利がいつかも、注目されています。

ただ、昨年は10戦10敗。今年初戦が1月23日に打たれ、最年長対局記録は97歳10ヵ月17日で70日更新されましたが、勝利はなかなか遠いようです。

ちなみに対局相手は佐川八重子社長の師匠、石倉昇九段でした。