ファン大興奮のイベント「群遊2025囲碁オールスター団体戦」 優勝は「トラトラメガネ軍団」

ステキなチーム名は公募で決まった

囲碁のトップ棋士の真剣勝負が間近で見られる「群游2025オールスター団体戦」(群游2025囲碁オールスター団体戦実行委員会、“見る・打つ・楽しむ”チームだごだご)が3月29日に名古屋市のウインクあいちで行われました。

文字通りオールスターが大集合して団体戦で戦う他にはないイベントで、トップ棋士の真剣勝負が間近で見られるため、会場にはおよそ500人の囲碁ファンが訪れていました。

5人1チームのトーナメント戦で、賞金総額は1000万円、優勝チームには500万円が贈られます。

出場メンバーを紹介しましょう。なお、チーム名は公募で決まったものです。

「世界一のキラキラ軍団」 一力遼棋聖、藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流立葵杯、牛栄子四段、上野梨紗女流棋聖

「他力本願」 山下敬吾九段、伊田篤史九段、本木克弥九段、富士田明彦七段、孫喆七段

「トラトラメガネ軍団」 芝野虎丸九段、佐田篤史七段、広瀬優一七段、大竹遊七段、酒井佑規六段

「龍翔鳳舞」 張栩九段、許家元九段、余正麒八段、謝依旻七段、呉柏毅六段

 

1回戦は抽選の結果、「トラトラ~」と「世界一~」、「他力本願」と「龍翔鳳舞」の対戦となりました。

一力棋聖を破って優勝に貢献した佐田七段

「トラトラ~」VS「世界一~」

芝野○-×上野梨紗

大竹×-○牛

佐田○-×一力

広瀬×-○藤沢

酒井○-×上野愛咲美

3勝2敗で「トラトラ~」の勝ち。とくに佐田七段が一力棋聖に勝って壇上に上がったときは、ひときわ大きな拍手が観客から送られました。

「他力本願」VS「龍翔鳳凰」

山下○-×謝

富士田×-○張

伊田×-○余

本木○-×許

孫○-×呉

山下九段は2年連続1勝もせずとも優勝していたのですが、とうとう(!)勝って「他力本願」ではなくなってしまいました。こちらも3勝2敗の接戦で「他力本願」が決勝に進みました。

決勝戦

「トラトラ~」vs「他力本願」

芝野○-×山下

大竹×-○富士田

佐田×-○伊田

広瀬○-×本木

酒井○-×孫

3勝2敗で「トラトラ~」が勝って優勝し、賞金500万円を手にしました。

芝野九段の安定した強さ、そしてワイルドカード(予選を勝ち抜いて参加)の酒井六段が2連勝と気を吐きました。

イベントも盛りだくさん

そのほか、会場には名古屋名物の「矢場とん」「妙香園」「両口屋是清」なども出店しグルメを提供したり、親子囲碁教室があったり、棋士に挑戦ができたり。対局合間には井山裕太王座らによるトークショーがあるなど、ファンを飽きさせない工夫が凝らされていました。

次回、ぜひ足を運ぶのをおすすめします!楽しいこと請け合いです。 

第72回NHK杯 余正麒八段が初優勝

初タイトルを手にした余正麒八段

第72回と長きにわたるNHK杯の決勝戦が3月23日に放映され、井山裕太王座を破って余正麒八段が優勝を果たしました。余正麒八段は全棋戦通しての嬉しい初優勝となりました。

NHK杯は日曜午後に放映され、囲碁ファンはほとんどの人が楽しみにしていることでしょう。

決勝戦の日は特別に、収録スタジオの隣に検討室がもうけられ、多くの棋士が集まって意見を交換していました。

井山裕太王座(左)の勝負手をうまくしのいだ

中盤でポイントを挙げた余正麒八段が井山裕太王座の勝負手をうまくしのいで勝ちきりました。

余正麒八段は、令和三羽ガラスと呼ばれた一力遼棋聖、芝野虎丸九段、許家元九段の3人と同世代で、本因坊挑戦者になり、リーグ在籍常連、対関西棋院連勝記録を立てるなど活躍していたのにもかかわらず、これまでひとつもタイトルを獲得したことがなかったのです。それは一力、芝野の二人を苦手としていたことが大きな原因でしょう。

今回、芝野九段を破ったことから勢いがつき、井山王座も破って嬉しい初優勝となりました。

棋聖戦 一力遼棋聖大逆転で防衛 井山裕太挑戦者を退け4連覇達成

劇的な大逆転で4冠を維持

棋聖戦第7局が3月12、13日に山梨県甲府市「常磐ホテル」で打たれ、一力遼棋聖が大逆転で中押し勝ちを収め、対戦成績を4勝3敗とし棋聖を防衛しました。

井山裕太王座は2年連続挑戦しましたが、2期ともフルセットの末敗退となりました。

棋聖戦は優勝賞金4300万円と、日本棋界最高金額の棋戦です。

一力棋聖は、棋聖のほか名人、天元、本因坊と併せて4冠を維持しました。

2日制の挑戦手合いは、棋聖戦と名人戦だけ。最高峰の2棋戦を保持し、碁界第一人者の地位を守りました。

しかし、棋聖戦を防衛した感想は「運がよかった」。とくに第6、7局は大逆転で勝ちを手にしたのです。

井山裕太王座が第4局までで3勝1敗とし、一力棋聖を追い詰めたが……

今シリーズは、井山王座が初戦に勝ち、第4局までで3勝1敗として一力棋聖を追い詰めていきました。

井山王座が棋聖復帰まであと1勝としたところから、一力棋聖も。踏ん張ります。

第6局は井山王座がほぼ勝ちを手中に収めたか、というところでまさかの一手が出て大逆転で落とします。第7局も終盤まで井山王座がAI評価値95%以上となっていたのに、おとなしく守っておかずにさらに相手を攻める手を選択したところから局面が紛れ、大逆転を許してしまいました。

井山王座がこんな終盤で勝ちきれない姿を見るのは初めて、というくらい劇的な幕切れとなりました。

「運がよかった」と一力遼棋聖

一力棋聖は「打っている途中は諦めたことはありませんでした。応氏杯で優勝して(世界チャンピオンになって)から、いろいろな人と会ったり取材を受けたりしたことで、責任感を感じていました。シリーズの前半はそれが力みにつながったかもしれません」と局後のインタビューでこたえていました。

第67回全日本女流アマチュア囲碁選手権大会が行われました

3度目の優勝を果たした藤原彰子さん(右は桜ゴルフ佐川八重子社長)

アマチュアの囲碁女性日本一を決める「全日本女流アマチュア囲碁選手権大会」(主催:公益財団法人日本棋院、後援:(株)桜ゴルフ、協賛:(株)シーボン、福島民報社)が、日本棋院(東京都千代田区)にて3月8、9日の両日に渡って打たれ、藤原彰子さん(東京・千葉代表)が3度目の優勝を飾りました。

女流アマチュア選手権大会(以下、女流アマ)の参加者は、北海道から沖縄までの地方予選を勝ち抜いた92人とシード選手(過去5年の優勝者)4人の計96人。年齢も8歳から81歳と幅広い世代が集まって、熱い戦いを繰り広げました。

つい2月までプロ試験を受けていて、僅差で落ちてしまった人は、優勝候補ではないかと目されていましたが、なんと、1次リーグで勝ち抜けず、決勝トーナメントに進めなかったのです。それほどアマチュアのレベルが高いということでしょう。

決勝戦は、3回目の優勝を目指す藤原彰子さんと準優勝2回、3位1回の実績がある宇根川万里江さんの、早稲田大学囲碁部先輩後輩対決となりました。

宇根川さんが最強に優勢を築いたとき、藤原さんがサバキの一手を放ちます。そこで宇根川さんが正解を打てず、形勢は大逆転しました。宇根川さんはここで「終わったな」と諦めてしまったのですが、実は終盤にチャンスがあり、それをつかめず初優勝はお預けとなりました。

早稲田の後輩の方の藤原さんが優勝しました。

「運良く優勝できてすごく嬉しいです。今回は内容のいい碁が多く、調子がよかった」と喜びを語りました。

審判長を務めた石倉昇九段は「藤原さんは一番安定感があった。姿勢がいいしマナーもよかった。広い世代のかたがたが集まって、囲碁は生涯の友ですね。素晴らしさを感じました」と締めくくりました。

2期連続3期目の天元となった一力遼天元就位式

芝野虎丸名人(当時)の挑戦を退け、天元位を防衛した一力遼天元の就位式が2月28日に東京都千代田区「松本楼」にて行われました。

天元戦は新聞三社連合(中日新聞<東京新聞>、北海道新聞、西日本新聞)が主催の棋戦で、タイトル戦の対局場が全国をめぐるので知られています。

最初にあいさつにたった主催新聞社代表の西日本新聞社 柴田建哉取締役会長がまず「一力さんは世界一の実力をいかんなく発揮した」とシリーズの戦いぶりを絶賛しました。

また、池坊雅史関西棋院理事長が、当日はユニクロの新聞全面広告に一力天元が採用されたことにも触れ、世界企業の顔になったことも讃えられていました。

ナショナルチーム監督の高尾紳路九段からは「若手は一力さんの背中を見て勉強している。碁の強さはもちろん、立ち振る舞い、言動などすべてとてもよいお手本になっています。世界の舞台でもさらなる活躍を」とエールを送られた。

一力天元は「半世紀の長きに渡って主催してくださりありがとうございます。きのうは手合い(棋聖戦第5局)で、負けるとお通夜の雰囲気になるかと思ったので(勝って来られて)ほっとしています。天元戦五番勝負の第1、3局はどちらに転んでもおかしくない勝負で、この2局に勝って結果を残すことができました。タイトル戦のなかで一番天元戦に出場しています。今後とも連覇を続けていきたい」と謝辞を述べ、大きな拍手を浴びていました。