女流本因坊戦が開幕 初戦は藤沢里菜女流本因坊が制す

6連覇と通算9期目のタイトルを狙う

藤沢里菜女流本因坊に星合志保四段が挑戦する第44期女流本因坊戦(主催:共同通信社/日本棋院/関西棋院、協賛:JA共済連/共栄火災)挑戦手合五番勝負が9月24日に岩手県花巻市「佳松園」で開幕し、藤沢女流本因坊が幸先のよい1勝を挙げました。

星合四段が女流本因坊戦に挑戦するのは4年ぶり2度目。初タイトルをめざします。

星合四段は「挑戦者決定トーナメントでは強敵と戦ってきました。自信を持ってタイトル戦に臨みたい」と語っています。

藤沢女流本因坊は6連覇および単独最多となる通算9期目のタイトルを狙います。

初タイトルを目指す星合四段(右は夫の孫喆七段)

ちなみに藤沢女流本因坊は、名人戦の最終予選にも残っていて、あと2勝でリーグ入りまで迫っています。一般棋戦でも大活躍なのです。

第1局は最初の戦いでポイントを挙げた藤沢女流本因坊がリードを守って、そのまま逃げ決まりました。

第2局は10月7日に日本棋院東京本院にて打たれます。

一力遼名人が3勝目。名人防衛まであと1勝

2連覇に王手

一力遼名人に芝野虎丸十段が挑戦する第50期名人戦第4局が神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて9月22、23日の両日に打たれ、一力名人が勝ってタイトル防衛まであと1勝としました。

名人戦第1局は大逆転で名人が勝利。第2局は壮絶な読み合いを制し、名人連勝。第3局は序盤の死活で名人に読み抜けがあり、2日目午後3時のおやつ時間前に名人が投了し、挑戦者初勝利。

意地を見せられるか

第4局は中盤からリードを広げ、1日目で名人のAI評価値が95%を超え、2日目午前11時37分に芝野十段が投了し、異例の早さでの終局となりました。

名人戦で私が担当した22期以降で、午前中で終わった碁はありません。2日目、お昼を食べてすぐ投了、というのが最も早い終局だと思います(第33期名人戦張栩名人―井山裕太挑戦者 井山挑戦者の勝ちなど)。

第5局は10月7、8日に山梨県甲府市「常磐ホテル」にて打たれます。

ここで決着するかどうか。注目です。

異例の速さで終局

井山裕太王座への挑戦者は一力遼棋聖に

快進撃が続く一力棋聖

井山裕太王座への挑戦者を決める第73期王座戦挑戦者決定戦が9月17日に日本棋院本院で打たれ、余正麒八段を逆転で下し、一力遼棋聖が挑戦権を獲得しました。

序盤でリードを奪った一力棋聖でしたが、途中逆転を許し、一時は余八段のAI評価値が98%を超えるほど追い込まれました。しかし、持ち前の粘り強さを発揮し、終盤で大逆転で挑戦権を獲得しました。一力棋聖の王座戦挑戦は7年ぶり3回目。まだ王座のタイトルを獲得したことはありません。

一時は追い込んだが…(余八段)

一力「久しぶりに五番勝負に出られてほっとしています。ベストを尽くせるようがんばります」

余「この碁はチャンスがあったかもしれませんが……。また決勝まで来られるようがんばります」

一力棋聖の快進撃が続いています。井山王座は止められるでしょうか。

王座戦五番勝負は10月17日に神奈川県秦野市「陣屋」で開幕します。

第50期名人戦第2局 in長野県高山村

名人戦史上最長手数に

一力遼名人に芝野虎丸十段が挑戦する第50期名人戦七番勝負。一力名人が第1局に勝って迎えた第2局は長野県高山村にある「藤井荘」にて打たれ、一力名人が白番1目半勝ちをおさめ、連勝となりました。

2日制であるのを忘れたかのようなスピード進行で、初日の手数は128手(=封じ手)となり、これまでの記録である120手を上回る名人戦史上最長手数となりました。

盤上は壮絶な読み合いとなり、立会人の張栩九段、解説の蘇耀国九段、Youtube解説の林漢傑八段らが「神の領域」と驚くほどAIと一致する高レベルの手が次々飛び出しました。

芝野十段の巻き返しはあるか

ただ1カ所、芝野十段が見えていなかった手段を一力名人が実行し、そこで勝負がついたようです。

これで名人の2連勝。芝野十段の巻き返しも期待したいところです。

ハイレベルの戦いは続き、次回第3局は9月11、12日に三重県鳥羽市の「戸田家」にて打たれます。

天元戦挑戦者に志田達哉八段 芝野虎丸十段の連続挑戦はならず

一力遼天元への挑戦者を決めるトーナメントの決勝戦が8月22日に日本棋院で打たれ、志田達哉八段が芝野虎丸十段を破って挑戦者に名乗りをあげました。志田八段の七大タイトル挑戦は初めてのことです。昨年、天元戦挑戦者だった芝野十段の連続挑戦とはなりませんでした。

右が志田八段(日本棋院囲碁チャンネルから撮影)

志田八段は福井県出身の34歳。日本棋院中部総本部所属。

若鯉戦(第2回は非公式戦)優勝、新人王戦準優勝など若手棋戦で活躍してきましたが、2018年にNHK杯で準優勝して全国に名が知れました。さらに2023年にタイトル獲得経験のない中堅棋士が参加するSGW戦で優勝しました。

ふだんから口数が少なく、携帯電話を持ったことがないというのは有名な話(連絡は家の電話でするそうです)。

対局中は石音を立てずにそっと打つのが特徴で、いつ打ったかわからないので記録係泣かせと言われています。

また、若い頃は細い身体をしていたのを見て、先輩棋士の彦坂直人九段が「ジムに行って身体を鍛えたら」とアドバイスをしたところ、素直に通い始めたという面もあります。

しゃべるのが苦手なのか、解説役は引き受けないという信念があったのですが、SGW戦では優勝旗士が翌年の大盤解説をやるという決まりがあって、昨年初めて解説をしました。

挑戦者となってのインタビューには「芝野さんに勝てると思っていなかったので嬉しいです」とこたえていました。

芝野十段は2日前に碁聖戦で敗れたばかり。過密日程が気になります。

8月26日には挑戦者として臨む名人戦七番勝負が開幕します。