Monthly Archives: 12月 2024

一力遼名人の就位式

芝野虎丸名人を破って第49期名人となった一力遼新名人の就位式が12月10日に東京都文京区「ホテル椿山荘」にて執り行われました。大勢のファン、親類家族、師匠、棋士仲間、洪道場の子供たちが集まり、一力名人を祝福しました。

一力名人は「プロになろうとしたきっかけは、10歳のときに仙台で行われた名人戦挑戦手合いを直に見たことによります。自分もこういうふうになりたいと思い、今の自分があるのも名人戦のおかげです。名人戦のころは応氏杯と重なりタイトなスケジュールでしたが、両方とも獲って結果につながってうれしかったです。名人は他のタイトルのなかでリーグに入るのも獲るのも時間がかかりました。ここまでこられたのも先生方や多くのファンの方々のおかげ」と述べ、大きな拍手を浴びました。

催し物として、会場から一力名人への質問コーナーがありました。

――― 10年後の夢は?

一力「棋士としての目標もありますが、囲碁を多くの人に知ってもらいたいというのが夢です」

――― お笑いのテレビなども観ますか?

一力「YouTubeで観ます」

――― 名人戦で印象に残っているのは?

一力「2局目の宮崎対局です。内容的にもそうですし、会場も初めて。上野愛咲美・梨紗姉妹が開設で来ていること、さらに現地から応氏杯を打つために上海に飛んだことも印象深いです」

――― 好きな偉人は?

一力「うーん、仙台出身なので、伊達政宗と書いてほしいといわれたことはあります」

なかなか囲碁記者には思いつかない質問もあって、勉強に(?!)なりました。

一力名人、重ねておめでとうございます。

井山裕太王座がタイトル獲得数歴代1位に 趙治勲名誉名人を抜いた

名誉王座に加えタイトル獲得数も単独1位に

第72期王座戦五番勝負(主催・日本経済新聞社)第4局が12月6日に神奈川県秦野市「陣屋」で打たれ、井山裕太王座が芝野虎丸九段に勝って対戦成績を3勝1敗として、王座を防衛しました。これで4連覇(通算10期)となり、「名誉王座」を名乗る資格も得ました。また、タイトル獲得数が77となり、趙治勲名誉名人の76を抜いて単独1位となりました。

歴代タイトル獲得数

1位 井山裕太王座……77

2位 趙治勲名誉名人……76

3位 坂田栄寿二十三世本因坊……64

4位 小林光一名誉棋聖……60

5位 大竹英雄名誉碁聖……48

ひとつひとつ積み重ねて通算10期達成

名誉称号は、5期連続か通算10期で獲得することができますが、これまでは皆5期連続で獲得していて、通算10期での獲得は井山王座が初めてです。

井山「2019年で5連覇できず、名誉王座はかなり難しくなったと思っていましたが、ひとつひとつ積み重ねて通算10期を達成できたことは、自分にとって大きな意味を持ちますし、自分なりに長くやれた結果がこうした形となって非常にうれしく思います」

左が趙治勲名誉名人

これを受けての超治勲名誉名人のコメントが発表されました。多くのメディアでは、前半が省略されてしまっていました。全文を掲載しますので、趙先生独特の表現をお楽しみいただけたらと思います。

趙治勲名誉名人のコメント

 井山さんに僕の記録を追い超されるたび原稿を頼まれます。腹が立つやら、怒りで胸は張り裂けそうです。この怒り、原稿用紙のマス目に埋めてやる!

 瞑想三日三晩。不思議なことに怒りより感謝しか思い浮かびません。井山さんに並ばれ、追いつかれ、背中を見られるのは趙治勲碁打ち冥利に尽きます。井山さんいつまでも美しく、強く、輝いて、俺たち碁打ちに感動と驚きをください。これですべての記録を破られたので最後の言葉になりました。  遙か彼方に行ってしまった井山裕太さんの背中にありがとう。

上野愛咲美女流立葵杯が世界戦優勝

上野愛咲美女流立葵杯が11月29日~12月1日に打たれた世界メジャー棋戦「呉清源杯世界女子囲碁選手権」決勝三番勝負で、中国の唐嘉雯(とう・かぶん)六段を下して世界戦優勝を果たしました。

呉清源(1914~2014)は囲碁史に燦然と輝く碁聖で、日本に帰化して日本で活躍した棋士です。呉清源を記念しての世界戦「呉清源杯」は今回で第8回を数え、日本、中国、韓国、台湾のほか北米(アマチュア)から16名が参加して打たれました。

団長を務めた謝依旻七段(左)は女流タイトル最多の記録を持つレジェンド

日本からは上野女流立葵杯のほか、藤沢里菜女流本因坊、上野梨紗女流棋聖の3人が出場。梨紗女流棋聖は2回戦で、藤沢女流本因坊は3回戦で破れました。

上野女流立葵杯は、準決勝で世界タイトルを何度も獲っている中国の於之瑩八段に勝って決勝に進みました。

決勝三番勝負では1局目に勝ったものの、2局目は「ド完敗」(上野女流立葵杯)。

上野さんの師匠の藤澤一就八段(右)

気持ちを入れ替えて第3局に臨み、AI越えの一手を「適当にポンと」放ち、優勢に立ちます。「読み過ぎるとわからなくなっちゃうので、気楽に打った方がいい。打っているときはこんな感じかな、と」。相手が勝負手で上野女流立葵杯の大模様に殴り込んできて、それを全滅させて勝利しました。

上野「まさか優勝できるとは思っていませんでした。2回戦が厳しく、なんとか勝つことができて勢いに乗れました。応援してくださったみなさんに感謝したい」

一力遼棋聖の世界戦優勝に続いて、上野愛咲美女流立葵杯も世界戦優勝を飾り、国際的地位が徐々に上がっている実感があります。2024年は、日本囲碁界の転換期になるのではと思います。

第2回実業団囲碁大会

無差別クラスの優勝は富士通チーム

3人1チームの団体戦、第2回実業団囲碁大会(主催:公益財団法人日本棋院、協力:一般社団法人IGOPRO)が11月24日に日本棋院東京本院にて行われました。

40社48チーム、約150人が一堂に会し、6クラスに分かれて対局し、大いに親睦を深めました。

優勝チームは以下の通り。

無差別クラス 富士通

Aクラス 日鉄エンジニアリング

Bクラス 三菱UFJ信託銀行

Cクラス 理化学研究所(Bチーム)

Dクラス SMBC日興証券

Eクラス 日野自動車

桜ゴルフチームも参加(左から西實さん、佐川八重子さん、岩田健作さん)

我が桜ゴルフチームもCクラスに参加し、3回戦打って1勝2敗で5位という成績でした。

主将:西實さん「学生のとき囲碁をやっていました。真剣勝負は貴重な機会です」

副将:佐川八重子さん「日本棋院の理事をやっておりますので、大いに盛り上げようと参加しました。いつもはプロの指導碁ばかりです。楽しく打ちました」

三将:岩田健作さん「互先を初めて打ちました。これを機にどんどん出ていきたいと思います」

この大会は「IGOPRO」が運営しています。メンバーの鶴山淳志八段、林漢傑七段も組み合わせをやったり、飲み物を用意したりと大車輪でした。

最後の懇親会では、チームを離れて出身地(北海道、東北、関東、関西、中四国、九州)別に分かれて親交を深めるなど、工夫された進行で楽しめたと思います。

また来年5月31日に第3回が行われることが決定しています。

それを目標に、また囲碁を楽しんでいければいいなと思います。