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名人戦リーグ全勝対決は井山王座に軍配

序盤で抜け出し、勝ち切った

一力遼名人への挑戦権を争う名人戦リーグは、全勝の井山裕太王座と福岡航太朗七段が激突する天王山を迎えました。

井山裕太王座は今年、棋聖戦で一力遼棋聖と戦っている最中から調子を落としてきました。勝っている碁をそのまま矛を収めず、さらに追及するなど自ら勝ち星を逃がすような戦いが散見され、3勝1敗と追い込んでいたのに、棋聖返り咲きを逃しました。棋聖戦が終わると、芝野虎丸九段との十段戦防衛戦に望みましたが、それも三連敗でタイトルを奪われました。対戦成績も10勝11敗と負け越し、プロ入りしてもっとも勝ち星に恵まれない状況。そんな中でも名人リーグは勝ちを維持し、全勝を守っていました。

破竹の勢いで、初リーグを全勝で走り、目下12連勝中の福岡航太朗七段と、井山王座との全勝対決は5月15日に打たれました。

今年は本調子ではなかった井山王座

対局前の予想では福岡有利ともいわれていましたが、蓋をあけてみれば序盤で抜け出した井山王座がそのまま勝ちきり、全勝を守り、名人挑戦に大きく前進しました。

残り3戦。「やることはかわりません。ひとつひとつ全力を尽くします」と井山王座。

挑戦権の行方にも目が離せません。

第80期本因坊戦挑戦手合五番勝負が開幕 一力遼本因坊が初戦を制す

リードを守り切った(写真は名人戦)

一力遼本因坊に芝野虎丸十段が挑戦する第80期本因坊戦挑戦手合五番勝負が5月14日に開幕し、一力本因坊が幸先のよい1勝を挙げました。

本因坊戦第1局の対局場は山梨県甲府市「常磐ホテル」。同所は「決着の常磐ホテル」といわれるほど、番碁の最後のほうにセットされることが多く、第1局での開催は新鮮に思えます。

一力本因坊も常磐ホテルでは何度も対局経験がありますが、「相手はいつも井山(裕太王座)さんだったので、芝野さんというのも新鮮な気持ちです」と対局前、話していました。

今年に入っての一力本因坊の成績は10勝7敗と、勝ち越してはいるものの、一力本因坊にしては少々物足りない感じがします。

対して芝野十段は今年、18勝3敗で国内戦は1敗しかしていないほど絶好調。

第2局は秋田・能代で開催(写真は名人戦)

どんな戦いになるかと見ていましたら、序盤の分かれで一力本因坊が一本取り、そのリードを守り切って勝利をつかみました。

当日、現場で開催された大盤解説会には、癌闘病を公表している趙治勲名誉名人が元気な姿を見せたのは、ファンにとって嬉しい時間になったでしょう。

本因坊戦第2局は5月25日秋田県能代市で打たれます。

三浦太郎新人王がテイケイグループ杯俊英戦で優勝

酒井六段をストレートで下し優勝した三浦太郎四段(日本棋院提供)

第4回テイケイグループ杯俊英戦の決勝三番勝負第2局が5月3日に打たれ、三浦太郎四段が酒井佑規六段に勝ち、2連勝のストレートで優勝を決めました。

三浦四段は昨年秋に新人王も獲得し、今、最も脂ののっている若手のひとりです。準優勝となった酒井佑規六段も、2022年には新人王を獲得しており、次代を期待される棋士のひとりで、その棋風は「混沌流」と呼ばれています。

テイケイグループ杯は、俊英戦、レジェンド戦、女流レジェンド戦の3つがあります。レジェンド戦は60歳以上で七大タイトル獲得経験者らが出場し、現在は片岡聡九段がタイトルホルダーです。女流レジェンド戦は45歳以上かつ女流棋戦タイトル獲得経験棋士が出場でき、小林泉美六段が2連覇中でタイトルを保持しています。

俊英戦は25歳以下の棋士で、優勝すると時期以降出場できない規定。

第1回優勝が許家元九段、第2回が一力遼棋聖、そして第3回が芝野虎丸十段と歴代トップ棋士が名を連ねています(芝野十段は、第1回、第2回ともに準優勝)。

一力棋聖、芝野十段らが抜けた本棋戦、次世代を担う期待の若手として三浦太郎四段が優勝したのです。

テイケイ杯俊英戦の優勝賞金は1000万円。皆さんご存じのNHK杯の賞金が500万円ということから見ても、高額といえるでしょう。

左から4人目が三浦四段、右から4人目が小林泉美六段(テイケイグループ杯女流レジェンド)

先日、棋士控え室で会って「優勝おめでとうございます」とお声かけができました。その際、棋士仲間たちに「優勝賞金の使い道は?」などと聞かれていましたね。

三浦四段はよく、私が観戦記担当の名人戦リーグの記録係を担当していますが、何しろ字が上手で、丁寧。三浦四段がつける棋譜はすばらしく芸術品、というのが印象的です。

今後の注目棋士として、ぜひ名前を覚えておいていただきたいと思います。