10月末に打たれた名人戦第6局で、一力遼棋聖が芝野虎丸名人に勝ってシリーズ成績を4勝2敗とし、初の名人位を奪取しました。
これで一力遼棋聖は四冠(棋聖、名人、天元、本因坊)となり、日本囲碁界の第一人者の地位を確固たるものにしました。
一力四冠は実は二刀流棋士。東北の有力紙「河北新報」創業家一族で、現在、河北新報社の取締役でもあるのです。
今年3月に就任したときには、両立に悩み、碁の調子を落とした時期もあったそうですが、今は折り合いをつけられるようになってきたとのこと。お父様の一力雅彦社主・代表取締役社長も、囲碁に負担がかからないよう配慮してくれているそうです。
そんな「囲碁一筋」ではいかない境遇のなかで、9月には日本勢19年ぶりに世界戦で優勝し、国内タイトル戦でも着々と数を増やしています。
会社経営をすることを子どもの頃から考えているからでしょうか、囲碁も自分が強くなることだけでなく、日本全体としてどう世界と戦って行けばいいか、組織としてどうするべきかの提言もいくつか行っています。
たとえば、ナショナルチームの対局を入れ替えのあるリーグ戦にして厳しいものにしたり、世界戦では通訳の他に研究パートナーたる棋士を同行させたりするなど、日本勢がより活躍しやすい環境に改革し、成果に結びつけました。
聡明で真面目、欠点がないのが欠点ではないかと思われるほどの好青年。まだ27歳ですので、今後の活躍はますます期待できそうです。