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囲碁AI「アルファ碁」を作ったノーベル化学賞受賞のデミス・ハサビス博士が来日し日本棋院にやってきた

デミス・ハサビス博士は、タンパク質の立体構造を精度よく予測するAIソフト「アルファフォールド」を開発し、50年来の科学の難問を解決に導く成果が評価され、ノーベル化学賞を受賞することが決まっています。

2016年、人類を初めて破った囲碁AI「アルファ碁」を開発。「アルファ碁の大成功は、AIの近代化の一歩を踏み出すことになりました。そこからアルファフォールドの開発にいたりました。過去現在、囲碁に取り組んでいるすべての方々のおかげでアルファホールドがあります。囲碁のふるさとといえる日本に来られて光栄です」とハサビス博士は挨拶されました。

まず、日本棋院の最上級の対局室にて、国民栄誉賞を受賞している井山裕太三冠と対局。九段の免状を授与されたあと、一力遼四冠と対談しました。

ハサビス博士は4歳でチェスを始め、コンピュータは8歳から、そして囲碁はケンブリッジ大学の学部生のころに出合い、「囲碁の数学的な固有の美しさに魅了された」そうです。

アルファフォールドは、囲碁だけでなく、現実世界の様々な問題解決に使えることがわかったといいます。

今後10年は、次のAIフェーズに入り、人間の専門家が目的をより早く達成するためのツールとして役立っていくと予想されていました。

囲碁を打つひとりとして、世界の様々な課題解決に微力ながら役に立っていると言われ、誇らしい気持ちになりました。

藤沢里菜女流本因坊5連覇達成 名誉女流本因坊の資格獲得

藤沢里菜女流本因坊に牛栄子四段が挑戦する女流本因坊挑戦手合第5局が11月15日に日本棋院東京本院にて行われ、藤沢女流本因坊が勝って3勝目を挙げ防衛を果たしました。

これで5連覇となり、名誉女流本因坊の資格も獲得しました。

女流タイトルでもっとも格の高いのが女流本因坊です。

五番勝負というのも、持ち時間4時間というのも、女流タイトルでは最長になります。

藤沢女流本因坊は、今期で11年連続挑戦手合出場し最多の8期の獲得となりました。

最初のうちは、タイトルを獲ったり失冠したりを繰り返していましたが、ここ5年は連覇で、女性棋士ナンバーワンの地位を不動のものにしました。

藤沢「素直に嬉しい気持でいっぱいです。思い出深いシリーズとなりました」

牛栄子四段を挑戦者に迎えた今期シリーズは、第1、2局は快勝したものの、第3局で躓きます。「時間のあるなか、手拍子で打ってしまって、反省点がありました」と藤沢女流本因坊。さらに気持の立て直しができなかったのか、第4局も「同じような見落としをしてしまって」。

第5局まで9日。その間、「終盤でミスが出るので、体力的にもプラスになるように、散歩を多めにして毎日1万歩を歩いたり、ピラティスにも毎日通ったりしました。第5局は集中力を切らさず打てたのはよかった」

昨年、この時期は女流本因坊の1冠のみだったが、現在は、女流名人、扇興杯の三冠に伸ばした。

さらに、今後も呉清源杯など世界戦でも大事な対局が続く。

藤沢「どの対戦も頑張りたいです」

一力遼棋聖が名人も奪取し四冠に

10月末に打たれた名人戦第6局で、一力遼棋聖が芝野虎丸名人に勝ってシリーズ成績を4勝2敗とし、初の名人位を奪取しました。

これで一力遼棋聖は四冠(棋聖、名人、天元、本因坊)となり、日本囲碁界の第一人者の地位を確固たるものにしました。

一力四冠は実は二刀流棋士。東北の有力紙「河北新報」創業家一族で、現在、河北新報社の取締役でもあるのです。

今年3月に就任したときには、両立に悩み、碁の調子を落とした時期もあったそうですが、今は折り合いをつけられるようになってきたとのこと。お父様の一力雅彦社主・代表取締役社長も、囲碁に負担がかからないよう配慮してくれているそうです。

そんな「囲碁一筋」ではいかない境遇のなかで、9月には日本勢19年ぶりに世界戦で優勝し、国内タイトル戦でも着々と数を増やしています。

会社経営をすることを子どもの頃から考えているからでしょうか、囲碁も自分が強くなることだけでなく、日本全体としてどう世界と戦って行けばいいか、組織としてどうするべきかの提言もいくつか行っています。

たとえば、ナショナルチームの対局を入れ替えのあるリーグ戦にして厳しいものにしたり、世界戦では通訳の他に研究パートナーたる棋士を同行させたりするなど、日本勢がより活躍しやすい環境に改革し、成果に結びつけました。

聡明で真面目、欠点がないのが欠点ではないかと思われるほどの好青年。まだ27歳ですので、今後の活躍はますます期待できそうです。

日本独自の「2日制対局」にある「封じ手」

現在行われている「名人戦」と「棋聖戦」の挑戦手合七番勝負は、1局持ち時間(ひとり)8時間、2日間に渡って打たれます。2日制の対局は日本独自のもので、他の国や国際棋戦では行われていません。

日本は江戸時代から囲碁を専業とするいわゆるプロがいて、時間無制限で対局していたという背景があります。

2日制の対局は一晩はさむので、不公平が生じないように、「封じ手」という手法が採られています。

1日目、定刻(名人戦の場合は午後5時半~)になったら、次の一手は盤上に打たずに、棋譜に書き込み、封筒に入れて保管(名目上は立会人ですが、実際は、宿の金庫)する、という仕組みです。

2日目の朝に、立会人が開封してその手を対局者が盤上に置いて再開される、という段取りです。

封じ手を行ったほうは、(当たり前ですが)後戻りができないため、書き間違えていたらどうしようと思ったり、誤算などがあったことに気がついたりすると一晩中悩み続けることになります。睡眠をとらないと勝負に差し障りがあるので、悩むより眠るほうがいいとはわかっても、眠れなくなるようです。

以前の棋士はそんなことを案じ、封じ手をしたがらなかったのですが、最近の若い棋士はあまり気にしていないようです。

ちなみに、将棋も同様に封じ手が行われますが2通用意したり両対局者がサインをしたりなど、様式が違います。

2通用意するのは、ひとつなくしても大丈夫なように、ということだそうですが、囲碁の方から見ると2通それぞれに違う手が書いてあったらどうするのか?などと心配してしまいます。

長時間(2日制)の碁なんて国際情勢(!)に遅れているという人もいますが、長い碁を打っていることで胆力が鍛えられ、一力遼棋聖は世界チャンピオンになることができました。

「封じ手」の伝統とともに、2日制も続くことを願っています。

「黒石」那智黒石の採石場を見学してきました

囲碁で使う碁石、何でできているかご存じですか。

簡易的なものはプラスティックやガラスでできてきますが、本来は、白石が蛤、黒石が那智黒石から作られています。

10月26、27日にあった「第10回熊野那智黒石囲碁まつり」に取材に行ってきました。

三重県熊野市は、唯一の那智黒石が採掘される場所です。それにちなんでの囲碁大会が催されているのです。

大会が始まる前に観光に連れて行っていただきました。

黒石に使われる那智黒石は、熊野市神川町だけで採れ、碁石のほか硯や朱肉入れ、香炉などに加工されています。那智黒石の粒子は細かい0.1ミクロンで、黒石不透明の砕屑ものから成り、砕屑竜士はほぼ一定方向に並んでいるので、一定方向に割れやすい特性を持っています。

那智黒石の採石場は、市街地から車で40分ほど山に入ったところにありました。

山肌にむき出しになっている那智黒石が見えます。

採掘して、碁石の厚みにスライスし、碁石をくりぬきます。

碁石は厚みがあるほど高価になりますが、あまり厚すぎても球体に近くなりコロコロして打ちにくくなります。

熊野市で加工された黒石は、宮崎県日向市に送られ、日向はまぐりでできた白石とセットになって販売されるとのことです。

ちなみに、日向市では「日向はまぐり碁石まつり」が行われています。

有段者になったら、いい碁石、いい碁盤を手に入れるのもいいですね。おすすめです。